057 ゲントのビアカフェ
ビール王国ベルギーには様々なビアカフェがある。今回紹介するゲントにあるDe Dulle Griet デ・デュレ・グリートではいっぷう変わったパフォーマンスでお客さんを楽しませてくれる。この店の名物は超ビッグなビールで、なんと50センチほどもあるフラスコ型ビアグラスで出てくるその名もMAX マックス!。観光客ならかならず頼むというその特大ビール、注文するとこわおもてのおじいさんがやってきて、「あんたの靴を片方よこせ」と持っていく。そしてその靴を、天井から吊り下がっているかごの中にポイッと入れてしまう。実はこれを見たくて世界各地からビール好きが集まるのだそうだ。その昔、貴重なビアグラスの盗難防止にと始めた事が今も続いていると言うのだが、かごの靴を見上げながら、皆でビールを飲んでいる様はなんだか妙な連帯感が生まれ、おかしい。もちろんビールを飲み干しグラスを戻すと、おじいさんは天井のかごをカラカラと下ろし靴を返してくれる。おじいさんより何倍も年期の入ったかごは、その歴史を物語る。昔から何も変わっていないのだろう、ビールもベルギーらしい濃厚でコクのあるタイプで、クラシックな味わいだった。いつまでも変わらぬ味とそのパフォーマンスは、時を越えその店の伝統としていっそう深みを増していく。






旅先では必ずその街の台所を訪れる。市場はおもしろい。ヨーロッパでは、たいてい週に1日は街の中心の広場で朝早くからワイワイガヤガヤとやっている。カラフルなテントを立て、ショウケースの中には新鮮な魚や肉、ハムやチーズ、パン、フルーツ、野菜・・・。地元の人たちはみんな思い思いの買い物をして足早に去って行く。どうも自分のひいきの店が決まっているようだ。店の人も手際よく次々品物をはかりにかけ、2、3言のやりとりがあってお金を受け取る。こうした人間ウオッチングで2時間は楽しめる。
ベルギーの首都ブリュッセルから南へ約50キロにある小さな町BINCH(バンシュ)、2月のこの時期だけは異様な盛り上がりを見せ、新聞の一面やトップニュースを独占する。2003年にユネスコの無形文化遺産にも登録された盛大なお祭りが催されるからだ。訪れたのは最終日、もちろん「ジル」のカーニバルが目当て。それにしても人、人、人で町に入るやいなや身動きとれません状態でびっくり。「ジル」とは(写真にある)派手な格好をした男達のことで、その古いインカ帝国の衣装は1549年にこの地方を治めていたハンガリーのマリーが宴の席にインカの踊り子を登場させたのが始まりだという。木靴を履き、太鼓に合わせて町を練り歩く時は奇妙な仮面をかぶり、パレードの時にはガチョウの羽の付いた大きな帽子をかぶり華やかに行進する。なんでもベルギー生まれの男性でバンシュに住んでいてどこどこに所属して・・・と、誰でも真似て参加することは出来ない。「ジル」になることはバンシュ人にはとても名誉なことなのだそうだ。さて、その盛大なお祭りは「ジル」たちが投げるオレンジ争奪戦でピークをむかえる。もらうと幸せになれるというその赤いオレンジだが、若いジルたちは面白がって周りの建物に全力投球で投げつけるので、あちこちから赤い雨が降り、あまり諸事情の分かっていない観光客にはクリーニング代の方が気になりそうなハチャメチャ具合。なんとも陽気で楽しいお祭りであった。
ゲデレーでは4月より、この楽しいバンシュのお祭りをモチーフにしたビール「バンショワーズ」をおすすめビールとしてご提供いたします。この機会にぜひバンシュテイストを味わってください。スペシャルペールエールのブロンドとスペシャルブラウンエールのブリューンの2本。ともにベルギービールらしいふくよかなコクをもつ素晴らしい味です。
ただ、近代的なビルなどはなく人々だけが新しくなって、中世にタイムスリップして生活している錯覚を覚えた。街を見渡せば、堂々とそびえ立つゲントのシンボルともいえるバーフ大聖堂をはじめ、フランドル伯の城、当時の商人たちの富と力の象徴ギルドハウスなど、数々の歴史的建造物にただただ圧倒される。文房具店のはがき売り場で兼六園ことじ灯篭の絵葉書を1枚見かけたが、同じ古都とはいえ石川県人としてなんだか姉妹の縁を切りたくなるほどの白旗感を感じた。
ゲデレーでも「ワーテルゾーイ」(おこがましくもゲント風と書いていた)はオープン当初からある人気メニューのひとつなのだが、今回の旅ではメニューの説得力アップのためにも、本場のワーテルゾーイを味わうことは必須であった。数あるレストランの中から選んだのはベストワーテルゾーイ賞に選ばれた「ByDenWyzenEnDenZot ベイデンウェイゼンエンデンゾット」。裏路地にある小さくこじんまりとしたお店で探すのに苦労したが、通好みの隠れ家的な感じとアットホームなあたたかい感じがとても良い心地にさせてくれるすばらしいレストランだった。料理も最高で、特にグランプリを獲得した魚介のワーテルゾーイはすばらしく、(新鮮な素材を使えばだせる味とは思えない)深い味わいとコクは久しぶりに感動した。このクリームで煮込む「ワーテルゾーイ」という料理は私の中では誰にでも真似できる、ごくごくシンプルな料理のはずだったのだが・・・。ゲントまではるばる食べに行った甲斐があったと満足感とともに料理の奥深さをしみじみ感じた。