077 フランス旅行記 ボルドー サンジュリアン編
マルゴーを抜けて、D2を北へ走るとまもなくサンジュリアンベイシュヴェル村に入る。まずシャトー・ベイシュヴェルが右手に現れ、さっそくウインカーを出す。白い塀に囲まれた大きな建物ときれいな花を使い整えられた庭は、道行くドライバー誰もが目を奪われる。その日もイギリスからの観光客が大きなバンを乗りつけ、ガイドブックを手にワイワイやっていた。正面の門ではカップルの女性がポーズをとり、男性がカメラを縦に横にとアングルを決めている。(三脚を貸してあげようと思ったが、おせっかいのようでやめた。)それにしてもさすがにボルドーで最も美しいと言われる邸宅、人気がある。ベイシュヴェルの真向かいにはブラネール・デュクリュの四角いシャトーが見える。サンジュリアンには他にもボーカイユやラローズ、ラグランジュ、バルトン、タルボなどスマートで綺麗なシャトーが多いが、それはそのまま気品としてワインに良く表れていると感じた。
マルゴーとポイヤックに挟まれて地味な存在のサンジュリアンだが、ワインは両方の特徴をうまく取り入れた秀逸なものが多い。1級こそないものの、この地区の2級シャトー達が良い年には1級にひけをとらないワインを生産することは皆知っている。それに続くシャトーも優等生がそろい、価格もまだまだ安いほうなので、上手にボルドーワインを楽しむならサンジュリアンはおすすめである。なかでも2級のレオヴィル・ラスカーズは、シャトー・ラトゥール(1級)の隣に畑を持ちながら、選別して気に入らないぶどうはすべてセカンドやサードワインにまわす徹底ぶりで、品質にも全くばらつきがない。今、格付けが見直されるなら、真っ先に上に上がるシャトーだと言われている、まさに「影の1級ワイン」である。
畑の先に目をやると、すぐそこにジロンド河が見える。近くまで行くと、老夫婦がのどかに釣りを楽しんでいた。岸辺には原始的な小エビ漁の網仕掛けが並ぶ田舎の河だが、大きくゆったりとした流れに長い間ボルドーワインを見守ってきた威厳すら感じてしまった。変わらぬ土と水はワイン造りにとっても重要な役割を担う。「母なる大地」に育つぶどうには、横で静かに愛情をそそぐ「父なる河」の存在が大きいのかも知れない。
さて旅を進めるが、感動というのは突然訪れるほうが喜びが大きい。日が暮れはじめる前にポイヤックで宿を探さないといけない・・・そんなことを考えながらカーブを曲がったら、レオヴィル・ラスカーズの門がいきなり目の前に現れた。(おかげで買ったワインが座席からいきおいよく転げ落ちてしまったが。)この門はワイン好きなら皆知っているし、興味がないならこのコラムをここまで読んでいないので余計な説明は省くが、サンジュリアンの象徴のような門である。今回の旅でどうしても写真に撮りたい場所が5ヶ所あった。そのひとつがこのレオヴィル・ラスカーズの門である。いずれにしても、今日を締めくくるにふさわしい光景に出会え、疲れたが満足、満足の1日であった。
・・・やがて日も暮れてきたので、今日はホテルをあきらめてこの門の前で寝ることにした。








