064 桐(きり)の大木
家にはそれぞれに家紋というものがある。戦場では、紋のついた旗印で敵か味方を判断する重要な役割を担い、また庶民は将軍家の紋所にひれ伏した。古くから桐(きり)紋は、菊紋とともに皇室の紋章として用いられ、足利尊氏が後醍醐天皇から下賜されてからは、代々天下人の紋所として君臨してきた。かの豊臣秀吉の紋は「太閤桐」とよばれ、とくに有名である。
中国では、聖王の出現を祝福する霊鳥とされる鳳凰(ほうおう)、その鳳凰は青桐(あおきり)の林に竹の実を食べて棲息するという。このめでたい伝説がわが国の桐文様の始まりだそうだ。(もっとも、中国の青桐と、ムラサキ色の花を咲かす桐を日本人が勘違いし、めでたい謂われのない木が格式高い紋として独り歩きしてしまったことはあまり知られていないようだが・・・。)
さて、ゲデレー前の藤木町バス停に大きな桐の大木がある。5月のこの時季は、ムラサキ色の花が咲き誇りとても見事なので、当店の場所案内の際、この桐の木を粋(いき)な目印として言うことがある。
もし来店時にこのコラムを思い出したなら、ぜひご覧いただきたい。先日の雨で、残念ながら花はほとんど散ってしまったが、蔦が絡まり長年の雨風に耐えてきた老木の佇まいもまた、おもむきがあると思う。ただ、いくらさがしても木が違うので鳳凰は見つからない。あしからず。




