032 ゲントの「ワーテルゾーイ」

ただ、近代的なビルなどはなく人々だけが新しくなって、中世にタイムスリップして生活している錯覚を覚えた。街を見渡せば、堂々とそびえ立つゲントのシンボルともいえるバーフ大聖堂をはじめ、フランドル伯の城、当時の商人たちの富と力の象徴ギルドハウスなど、数々の歴史的建造物にただただ圧倒される。文房具店のはがき売り場で兼六園ことじ灯篭の絵葉書を1枚見かけたが、同じ古都とはいえ石川県人としてなんだか姉妹の縁を切りたくなるほどの白旗感を感じた。
さて、そのゲントのレストランのメニューには「Waterzooiワーテルゾーイ」という料理が必ず見つかる。鶏肉や魚を野菜、生クリームと一緒に煮込むクリームシチューのような感じの名物郷土料理である。たくさんの水という意味のこの料理は、もともと川魚を煮込んで食べた古いフランドル地方の田舎料理だったのだが、川魚が獲れなくなった現在、鶏肉や海の魚貝類でつくるのが一般的になったという。
ゲデレーでも「ワーテルゾーイ」(おこがましくもゲント風と書いていた)はオープン当初からある人気メニューのひとつなのだが、今回の旅ではメニューの説得力アップのためにも、本場のワーテルゾーイを味わうことは必須であった。数あるレストランの中から選んだのはベストワーテルゾーイ賞に選ばれた「ByDenWyzenEnDenZot ベイデンウェイゼンエンデンゾット」。裏路地にある小さくこじんまりとしたお店で探すのに苦労したが、通好みの隠れ家的な感じとアットホームなあたたかい感じがとても良い心地にさせてくれるすばらしいレストランだった。料理も最高で、特にグランプリを獲得した魚介のワーテルゾーイはすばらしく、(新鮮な素材を使えばだせる味とは思えない)深い味わいとコクは久しぶりに感動した。このクリームで煮込む「ワーテルゾーイ」という料理は私の中では誰にでも真似できる、ごくごくシンプルな料理のはずだったのだが・・・。ゲントまではるばる食べに行った甲斐があったと満足感とともに料理の奥深さをしみじみ感じた。
帰る際、マダムに幸せなひとときを過ごせた感動を伝え、このすばらしい味を日本に帰り再現するとパスカルシェフに誓った。





