029 寒鰤
「鰤おこし」この辺りでは12月師走の雷鳴をブリ漁の合図としてこう呼ぶ。私は富山県氷見市出身、お国自慢といえば「氷見の寒ブリ、日本一!」と決まっていた。とにかくあの脂がのった寒ブリは最高、格別だ。大学在学中、都会(といっても名古屋)の人たちにこのうまさを味わってほしいと思って実家から送ってもらっていたが、「ブリ」とあだ名がつきそうになって友人たちにご馳走するのをやめた。
ブリは1メートルを超す大型の回遊魚で産卵前の冬は栄養を蓄え、とにかく脂がのって格別においしい。厚く切って照り焼きや寒い時期はブリ大根も良いが、やはり個人的には刺身が好きである。栄養素も豊富で、脂部分には血栓を防ぐEPA、コレステロールを抑え脳を活性化させるDHAが多く含まれ、赤い血合い部分には肝機能を強化するタウリンをはじめミネラル、ビタミンE、B、Dを含んでいる。火を加えると脂肪酸が流れてしまうので、栄養を考えても刺身がよろしいのでは。
この時期はスーパーでもパック売りのブリの刺身をよく見かけるが、氷見では1メートルほどの大物でないとブリとは呼ばない。ご存知のように出世魚であるブリは大きくなるにつれ呼び名が変わる。氷見ではコズクラ、フクラギ、ガンド、ブリと出世していくが、それが関東辺りではワカシ、イナダ、ワラサ、ブリ、関西辺りではツバス、ハマチ、メジロ、ブリとなるそうだから、その地方で全く違う呼び名になる少々ややこしい魚だ。
いくらおいしいと言っても、西洋料理店ではさすがに醤油を添えてお出しすことは出来ないので、寒ブリが入荷するとゲデレーでは洋風お刺身カルパッチョとしてメニューに加える。塩コショウ、上質のオリーヴオイルにバルサミコやマスタード、時には醤油やわさびを隠し味にすることもあるが、新鮮なブリはどんなソースにも合う存在感があり、風味あるハーブサラダなどをあしらえば立派な前菜として仕上がるのだ。




