026 古い地図
1677年、伊能忠敬が日本地図を仕上げた。その努力と信念には素直に脱帽する。人工衛星が上がり、細かな道路までがナビゲーションされる今日のような時代が来ることを、その時彼は想像できたであろうか。
ゲデレーの壁を飾るもののひとつに、額に入れて仕立てた古い地図がある。ヨーロッパでは、街のあちこちにアンティークを扱う店があり、古い書物や年代物のオリジナル地図などは比較的手に入りやすいので、我が家では気に入った街の古い地図を探すことを旅の楽しみのひとつにしている。見ているとその時代の情勢が何となく分かり面白い。当時の人たちはこんな地図を見ながら旅をしたり、学んだり、時には戦ったりしたのだと思うと歴史を感じてワクワクする。
お客様には、食事の合間にちょっとだけ目をとめていただきたい。現代の地図とは全く違い、それこそひとつの芸術作品と言って良い程のオーラを感じる。パノラマで描かれたもの、細かく距離が書かれたもの、特に青の部屋に掛けてあるブルージュの地図は、低空から見たモチーフで、運河には小船や白鳥の姿まで描かれている優れもの。少なからずそれらはゲデレーの雰囲気を支えていて、お客様の満足度アップに協力してくれていると思う。
雰囲気の話は前にも書いたが、細かい事を言えば、テーブルの配置、クロスの色合い、照明の具合、皿、カトラリー、家具・・・。それらを統一感のあるコーディネートでまとめることは、居心地良い雰囲気づくりには欠かせない課題だ。壁の古地図はじめ、ゲデレーはアンティークの家具などを配し、重厚でクラシックな感じを出せるよう考えている。ただ最近は、つくったハード面プラス、大事なのはソフト面だと感じるようになった。厨房からの食欲そそるにおい、何気ない季節の花や芳醇なワインの香り、スタッフの落ち着いた接客、そして何より楽しそうに食事をするお客様が生んでくれる空気・・・。
悟ったようなことを書いたが、現在36歳、私自身も店とともに歳を重ね、味わいのある古い人間になった時にはもう少し説得力のあるコラムとして読んでもらえるだろうか。





