030 こころざし
1年の計は元旦にあり。年の初めに掲げる目標ときたらこれまたいい加減なもので、春ぐらいになるとコロッと忘れてしまっていることが多い(のは私だけであろうか)。あれこれ欲張りな私の場合、振り返ってみると達成出来なかった目標が山のようにあり、お恥ずかしいかぎりだ。最近はあまり具体的な細々した目標は公言しないようにしている。ただ、目指すものが小さすぎてもやる気が起こらない性分であるからして、内に秘めた目標はできるだけ大きく持とうと心がけてはいる。
若い頃からの夢は、「ポルシェに乗ること」であった。人から見ればバカと思われたかもしれないが、至って真剣であった。最初はただの憧れから抱いた夢が、大人になるにつれ、具体的な目標となり励みになっていったようである。社会に出ていろいろな事を経験し、一流品のネクタイを締めるためには、それに合う服、靴、時計、そしてなにより中身が必要なのだと学んだ時、もっと自分を磨き、見合う人間になりたいと仕事や遊びにとにかく一生懸命であった。少年時代の浅はかだがデッカイ「目標」が、少なからず今の私を育てたのは間違いない。
「少年よ大志を抱け」という有名な言葉がある。私も志は大きく持とうと心がけている。もちろん、志はデパートやくるま屋で買えるものと違うことぐらい分かっている。志とはそんな欲や見栄の絡むものではなく、いわばその人の信念に近い、もっと心の奥の清らかな部分で燃えているもの。大きい炎を燃やすということは、それだけの油が必要だということも承知している。(その点ではポルシェともいっしょなのだが・・・。)
5年前、大きな「志」を持ってつくったゲデレー、認知度はまだまだ低いがおかげさまでたくさんのコアなファンが応援してくださる。私自身、勝負した5年間であったからこそ、ごひいきをいただいたお客様には、これからもっと心地よい空間、時間を提供して恩返しをしていきたい。もう少年という年ではないが、でっかい「志」を抱いてこれからも頑張っていこうと思う。西洋料理店ゲデレーを愛するお客様のために、そして我が人生を楽しむために。
2007年もどうぞよろしくお願い申し上げます。






「鰤おこし」この辺りでは12月師走の雷鳴をブリ漁の合図としてこう呼ぶ。私は富山県氷見市出身、お国自慢といえば「氷見の寒ブリ、日本一!」と決まっていた。とにかくあの脂がのった寒ブリは最高、格別だ。大学在学中、都会(といっても名古屋)の人たちにこのうまさを味わってほしいと思って実家から送ってもらっていたが、「ブリ」とあだ名がつきそうになって友人たちにご馳走するのをやめた。
この時期はスーパーでもパック売りのブリの刺身をよく見かけるが、氷見では1メートルほどの大物でないとブリとは呼ばない。ご存知のように出世魚であるブリは大きくなるにつれ呼び名が変わる。氷見ではコズクラ、フクラギ、ガンド、ブリと出世していくが、それが関東辺りではワカシ、イナダ、ワラサ、ブリ、関西辺りではツバス、ハマチ、メジロ、ブリとなるそうだから、その地方で全く違う呼び名になる少々ややこしい魚だ。
日本人ほど宗教、信仰にこだわらない国民もめずらしい。先月京都のあるお寺で出会った20代のカップルは、首から十字架のネックレスをさげ、パンパンと2回かしわ手を打ってお参りしていた。妙な感じだったが、彼らも幸せを願ってのことだ。

ヨーロッパでは昔からスペルに「R」が付く月しか食べてはいけないとされてきた。つまり5、6、7、8月の4ヶ月間を除いた月だ。旬もあるが、おそらく昔は衛生面の問題で夏の暑い時期は食あたりが危ないのでそう言われたのであろう。日本でもカキはやはり冬のイメージが強く、鮮魚売り場にカキが並び始めるとそろそろ寒い冬到来といった印象を受ける。栄養面から言えば、カキは「海のミルク」と言われるほど栄養豊富で、肝機能を助けるタウリン、グリコーゲンをはじめ、亜鉛や鉄、特にミネラル含量は群を抜く。生ガキにはレモン(酸味)をかけることで、それらの吸収が高まるとのことなので、お酒のお好きな方はギュッとひと絞りをお忘れなく。
ブリュッセル、グランサブロン広場にあるベルギーでも屈指の人気店「レカイエ・デュ・パレロワイヤル」は私がもっとも感銘を受けたレストランである。(当店カウンターに掛けてある魚が描かれた額は、結婚記念日だからと無理やりお願いして貰ってきたその店のメニューだ。)エカイエとはカキの殻を開ける職人のことで、文字通りこの店の売りは生ガキをはじめとした魚介料理。とにかく内装のセンスが良く、味も抜群。そして何といってもユニークなのが黒服のギャルソンに交じって、前掛けをした魚市場のカキ開け職人風のおじさんが料理を運んでくるところだ。せっかくだからとその時はベルギーで採れる3種類の生ガキ盛り合わせを頼み、シャンパーニュと合わせて楽しんだ。残念ながら雰囲気にのまれてカキの味の違いは覚えていない。ひとつ言えることは生ガキは新鮮さが命、殻を開けてみずみずしくプリッとしていないとだめ。修業時代、1日100個以上のカキを開け続けた経験から学んだことだ。
1677年、伊能忠敬が日本地図を仕上げた。その努力と信念には素直に脱帽する。人工衛星が上がり、細かな道路までがナビゲーションされる今日のような時代が来ることを、その時彼は想像できたであろうか。
お客様には、食事の合間にちょっとだけ目をとめていただきたい。現代の地図とは全く違い、それこそひとつの芸術作品と言って良い程のオーラを感じる。パノラマで描かれたもの、細かく距離が書かれたもの、特に青の部屋に掛けてあるブルージュの地図は、低空から見たモチーフで、運河には小船や白鳥の姿まで描かれている優れもの。少なからずそれらはゲデレーの雰囲気を支えていて、お客様の満足度アップに協力してくれていると思う。
先日図書館でのこと。「世界各国の小学生が描いた絵」のコーナーが設けてあり、これがなかなか面白く、妻とふたりで見入ってしまった。国柄の違いが色彩感覚の違いとしてこれ程までハッキリ表れるのかと、思わず吹き出した。欧米人の子供が使う色のカラフルなことと言ったらない、驚いた。それに比べ、日本人(アジアでも中国は意外にカラフル)の描く絵はとにかく暗く、色が少ない。もし私が先生なら子供たちにはこう教える。「32色の色鉛筆をまんべんなく使い切りなさい」と。
西洋料理にはよく使われ、サラダはもちろんメインの横に1枚あしらうだけで、グッと料理が引き立ち、皿が華やかになる。特にイタリア料理には欠かせない野菜として人気。残念ながら鮮やかな赤紫色は熱に弱く、キャベツのような火を通しての利用価値は少ないので、やはりサラダ向きの野菜であろう。苦味が特徴の味はお世辞にもおいしいとは言えず、彩り効果として使う添え物どまりの感は否めないのだが・・。ただ、栄養面では生で食べることで高血圧の予防改善に良いカリウムが多く取れるそうだから、少々の苦味は我慢していただこう。