007 落語会のご報告
その張りのある声から伝わる「気」をきっと誰もが感じたはずだ。私はすっかり江戸時代にタイムスリップし、旅籠で繰り広げられる主人と客人とのやりとりをすぐそばで見物していた。「いつの間にか」とはこういう事を言うのだろう。いつの間にかその話の中に引き込まれていた。
ある日、ひょんな話から「真打 入船亭扇治落語会」を催すこととなる。普通、当店のような洋風の店が企画するには少しは抵抗があるのだろうが、私はふたつ返事でお願いした。落語に特別興味があった訳ではないが、真打の話を間近で聞く機会などそうないし、話題づくりのひとつとしてという思いもあった。
急な話で不安もあったが、仲のよい友人には半ば強引に声をかけ、それでも常連さんを中心に(一生寄席に足を運ぶことなどないであろう)25人程が集まった。
ステンレスの四角い調理台にテーブルクロスを掛けてつくった即席台座、客席には折りたたみ椅子を並べ、大きく真打の名が書かれた紙はハンガーにテープでくっ付けてぶら下げた。学園祭でももう少しマシなセッティングをするだろうと申し訳なく思ったが、扇冶さんは座布団さえあれば大丈夫だよぐらいの余裕で、こころよく準備を手伝ってくださった。
チャカチャンリンチャンリンドンドン~ 何ともほのぼのとした出ばやしの音とともに落語が始まったのが午後7時半。ほとんどが素人という事もあり、前半は落語にまつわる説明やわかりやすい小話など、緊張をほぐしリラックスさせる軽い準備体操といった話が主。休憩をはさんでの後半は40分程の本格的なもの。日ごろ客席として2組しか座っていない所に無理矢理詰めた為少し蒸したが、皆暑さを忘れるほど聞き入り、あっという間に終わったという感じだった。
メリハリをきかせ最後には大人向けの小話でしめ、フルコースディナーでいうデザートまでたっぷりいただいた。
いくらテレビが大きく綺麗になろうと、生の迫力や緊張感を伝えるのは不可能なのだとあらためて実感した。夜もふけて笑顔で帰路につく友人達の背中が言う、すばらしい「気」をいただき、「くの上」なく幸せな1日であったと。 お後がよろしいようで・・・。




