エペルネーから電車でアイへ向かう。ボランジェなどで有名なアイ村のシャンパンは、黒ぶどうピノ・ノワール種を多く使ったコクのある味わいが特徴で、ちいさな村ながら世界中に注目されている。
アイ駅は本当にちいさな田舎の駅で、私のほかには数人の小学生が降りただけだった。そしてあいにくの雨・・・。注目はされてもわざわざアイまで来る人は少ないのか、標識や地図も見当たらない。とりあえず小学生の後ろを怪しまれないよう一緒について行くことにした。それにしてもヨーロッパの田舎は、時が止まったようにゆっくりゆっくり流れている。日本と同じ速さで時間が流れているとはとても思えない。雨さえ上がってくれれば、のどかな散策なのだが・・・と、やっと見つけた小さなカフェで雨宿りがてらのコーヒーブレイクとした。
カフェ内では数人がカウンターでワイン片手に半分出来上がっている様子。聞けばシャンパン工場で働く仲良し3人組で、昼休みの団らん中らしい。いちばん明るいおじさんは老舗メーカー「ゴッセ」、あとのふたりは「ボランジェ」の樽工場で働いている人たちだそうだ。私が日本でレストランを営んでおり、ワイン産地巡りとしてこの村へやって来たと伝えると、「よし、俺について来い!」と雨の中を足早に歩き出した。幸運にも「ゴッセ」のマネージャーに頼んで、特別にカーヴを見学させてあげるというのだ。
こんな地図じゃ分かんないぜ!ムッシュ。
俺が口をきいてやるぜ!ムッシュ。
おじさんに付いてしばらく歩くと「ボランジェ」の樽工場に到着する。樽から「ボランジェ」の良い香りが漂ってきた・・・感じがした。
あの007ジェームズ・ボンドも愛した「ボランジェ」。
「ゴッセ」到着。
「ゴッセ」とは、当時アイの市長だったピエール・ゴッセが1584年に設立しシャンパーニュで最も古い歴史を持つメゾンで、加えて昔ながらの伝統的技法にこだわり続けている老舗中の老舗である。「ゴッセ」の製法の最大の特徴は、一番搾りのぶどう果汁だけを用い、マロラティック(MLF)発酵を行わないところにある。 <マロラティック発酵とは、乳酸菌を用いすっぱいリンゴ酸をまろやかな乳酸に変える発酵のことで、アルコール発酵の次におこなわれるため2次発酵とも呼ばれている。通常赤ワインの製造過程でおこなわれる発酵だが、ブルゴーニュ白ワインの多くは、まろやかで芳醇な香りを出すためにおこなっている。ロワールワインやブルゴーニュでもシャブリの酸味がシャープなのは、マロラティック発酵をおこなっていないからである> つまりは、ぶどう果汁本来の酸味とアロマが残り、とてもフレッシュなものになるということだ。
輸出担当マネージャーのフィリップさんがこころよく出迎えてくれた。最大手の「モエ・エ・シャンドン」社と違い、このアットホームさが嬉しい。
アイの位置関係と特徴を丁寧に説明してくれた。
工場内は、何とも言えないあまい香りに包まれていた。
クリスマス用の大きいボトルを今ルミアージュしているのだという。もちろん手作業で、毎日少しずつ回して澱を沈める。
セラーの中はひんやり。たくさんの古いヴィンテージワインが眠っている。
さていよいよデゴルジュマン!ビン先に溜まった澱を抜き取る作業。
先をマイナス30度近くで凍らせて栓を抜く。
中のガス圧により凍った澱が飛び出す。
コルクを詰める作業。若いお兄さんは、異国からの見学者がうれしいのか、詰める前のコルク栓を2個おみやげにくれた。
誇りをもって仕事をするおじさん。
いよいよ仕上げ。ネックを包み、ラベルを貼る。
最後に試飲まで!!グラン・ミレジム1999年とセレブリス ブラン・ド・ブラン。青リンゴにも似たフレッシュな香り!
「シャンパーニュのピノ・ノワールは最高だよ!」と自信を持つフィリップさん、とてもめずらしいという「ゴッセ」のアンボネイを試飲させてくれた。ピノ・ノワール種で造られる赤ワインで、ロゼシャンパンなどを造る際に添加されるもの。他にはあまり出回らない貴重なワインだとか。当然美味。
このたび雨のおかげで思わぬ出会いがあり、有意義な滞在となったシャンパーニュ「アイ」。カフェで出会ったおじさん、誇りを持って働いていた「ボランジェ」や「ゴッセ」の皆さん、そして帰りは車で駅まで送ってくれたフィリップさん、本当にメルシーボークー!やさしい愛があふれる「アイ」からの突撃レポートはこれにて終了。明日からはシャンパーニュを離れ、アルザス地方へ。コルマールを拠点にアルザスのワイン街道のレポートなどお楽しみに。